映画の感想③

2025年5月13日

Yシャツ+ネクタイに作業着スタイルについて、さらに調査(普段着用している人にインタビュー)してみました。そしたら、技術系の人たちにとってあの格好はかなりフォーマルなスタイルと認識されていると言う事が判明。組織長などのエライ人に会う時はさすがにジャケット羽織るけど、それ以外なら大抵OKなんだそう。礼装よりちょっと格が落ちる準礼装的な…? あれが選ばれてるのは現場に行くからという実用的な理由だと思っていたけど、あれでどこにでも行けると言う対応力の高さが評価されてるっぽいです。コンサルとかがスーツで来たりすると「営業か?」と思うとのことで、あれを着用することで自分は技術系の人間だということを示す意味合いもありそうでした。面白いな~。

「あんのこと」

事前情報ほぼなしで見てしまったので、見終わった後もかなり引きずった…。暗くて救いのない、哀しいお話でした。実際の事件をもとに作られたフィクションとのことですが、その事件のあらましの記事を読んだ限りかなり忠実になぞってると思います。この日本のどこかに、まだあんのような人がいる。そのことに見た人は心を痛めると思う。負の連鎖はどうやって断ち切ればいいのか…。

個人的には、佐藤二郎さん演じる多田羅刑事が一番の悪だと思う。あの立場の人がああいう事をすると、あんのような人はもう誰も信じられなくなってしまうから。多々羅がああいう事が出来たのは、結局はクスリをやってた人たちを自分より格下だと認識してるからですよね。対等な人間として関わっているわけではなかったからこそ、ああやって自助グループに来てる人たちからさらに搾取することができたんだと思う。支援者として最悪のタイプだと思います。だから、最後にあった「あんはクスリをやめられていたんです」と泣いて訴えるシーン、空々しくて怖いくらいでした。多々羅がクスリを断つための自助グループを立ち上げてたくさんの人を支援している一方で、メンバーから搾取しているというその矛盾っぷりに自分で気が付いていないあたりがとてもグロテスクでした。ケアは簡単に支配と被支配の関係を生み出すことができるので、そのあたりをしっかりわきまえておかないといけないなと改めて感じました(それを体現した人物だったのかもしれません)。

一方で、多くの人が似たような思考をたどるだろうなと感じたのが稲垣吾郎さん演じる記者の桐野です。自助グループで行われている多田羅の悪行を密かに調べつつ、いざそれが記事になり、いろいろあってあんが最悪の結末に至った後、留置所だか拘置所だかで多田羅に面接していうんですよね。「僕が記事を書かなければこんなことになっていなかったのでしょうか」と。わかる、私だってそう思うと思う。だって、実際多田羅のやったことは最低の行為で弾劾されてしかるべきだし、記事を書いたことは悪い事でも何でもない。だからと言って、それを読んだあんのような人がショックを受けて絶望してしまうことも予測はできたし、支えを奪う事になるのもわかっていた。じゃあ、どうしたらよかったの? って。…どうしたらよかったんだろうね。私もわかんないです。

人は人との関係性の中でしか回復できない

それを思うと、あんを死に至らしめたのはやっぱり孤独なんでしょうね。タイミング悪く、コロナで居場所と人とのつながりを失ってしまった。それまでは何か(主にお金と身体)を提供することでしか人から優しくしてもらえなかったあんが、そうではない人間関係を構築しつつあったのに。母親があんの働く高齢者施設に金をせびりに来た時、車いすのおじいさんが「やめろー」って突撃してくれたの笑った一方で泣けたんだけど、ああやって自分を大事にしてくれる人がまわりにいなくなってしまった(本当はあの施設長さんのような人のところでいるのが一番よかったのに…)。最後に、焼けないように千切って手に持っていた手帳のページにはハヤト君の食べられないものや好きな物なんかが書いてあったのが本当に泣けました。ハヤト君は、あんに交換条件ではない愛情というものを教えてくれたんだろうな。

小見出しの言葉は読んだ本に出てきたもので、「人は人との関係性の中で病むのだから、その中でしか回復できない」と書いてあったと記憶しています(正確には違うかもですが意味はあってると思う、著者失念)。確かにそうなんだろうな。とは言え、あんのように「社会から零れ落ちて孤独に生きている人たち」に支援の手を差し伸べるのは、「こうすればいい」みたいな簡単な問題ではないので途方に暮れてしまう…。まずは知ること、そして考えることくらいなら、私にもできるかな…。

河合優実さんは素敵な女優さんだった

朝ドラの蘭子ちゃんしか知らなかったけど、なんか有名な方らしいですね。確かに、あんはセリフは少ないけどなんかリアルと言うか、こういう人いそうだなって印象でした。佇まいからはあんの抱える痛々しくどうしようもない苛立ちと哀しみを感じることができました。あの物憂げな目と口元がいいのかもしれない。雰囲気がある。こういうのって天性で出そうと思っても出せないから、俳優として生かして行って欲しいですね。他の作品も見てみたくなりました。

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