家人が飲み会で夜不在ということでのんびり好きなことできるわ~と、ようやく『チ。地球の運動について』を読みました。いつレンタル屋に行っても歯抜けだったので、一気読みしたかった私は全巻揃うのを待っていたんだ~。感想としては一言、良かったです! 最初から最後までずっと泣きながら読みました。なんというか、こういう話に自分は弱いんだなと改めて認識した…。以下、感想など。完結済みの本なのでネタバレ配慮していません、あしからず。
ヤなヤツ多いな~
というのが第一印象でした。登場人物に関してだけど。第一章のラファウしかり、第二章のバデーニしかり。でも読み進めていくうちにやっぱり好きになっちゃうんだよね。だって、二人とも知を追求することに夢中になっているだけの、出来るヤツにありがちな尊大な態度の可愛いやつらだったわけだし。この、知りたいという気持ち、一つを知ったらもっと、もっと、という探求心っていうのは、無いと困るけどあればあったで本当に厄介な物と思う(それで身を滅ぼすことさえある)。純粋なだけに尊いと言うか。一旦認識してしまうと自分では抑えようがないし、誰であっても止められるものではない。それくらい強くて無限に湧いてくる欲求だと思う。これは別に『チ。』のように知的探求に限るわけじゃなくて、他にもいろいろあると思います。趣味の分野とか、仕事とかね。こういうモノに出会えた人は幸せだと思う。しんどさは常に付きまとうだろうけど。その熱さに人は憧れるのではないかなぁ。
後、もう一人嫌な奴といえばノヴァクですよね。とことん地動説者を追い詰めて殺す。そこに容赦など一切なく、ただもう盲目的に教会の言う事を信じ、「やれ」と言われたことをやる。彼自身の思考の深まりはない(ラファウの死が最後のチャンスだった)。最終的に彼は教会に簡単に切って捨てられ、それまで信じてきたものは絶対ではなかったこと、自分のやってきたことが無意味どころか悪になったことを知って死んでいくわけですが(正義だったはずなのに)、個人的には一番哀れだなと思いました。だって、娘も自分で殺したようなもんですしね(これについて私は気づいていた派です)。ただ、彼の最期の神への祈りは本物で、これが本当の信仰でしょ? っていう事なのかなと思ったり。
話はちょっと逸れますが、以前、自分の職場に生粋のクリスチャンがいたんですね。何も知らないバカな私の「神様を本当に信じてるの?」という失礼極まりない質問にもちゃんと答えてくれるいい子でした(ちなみに答えは「信じるかどうかではない、いることが前提でそういうものだから」でした)。信仰を持つ人の事を「神様にすがらなきゃ生きていけない弱い人」と言う人もいるけど、自分はその子に出会って「信じているからこそ強くなれる」のではないかと思うようになったんだよな。自分は宗教に関しては無宗教に近いごく一般的な日本人なので本当のところはわかっていないのでしょうけど。
継承するという希望
読みながら、「継承」ということが前面に出てくるのが印象的だなと思ってました。作中ではそれを「歴史」という言葉に置き換えられていたかもしれません。人間の一生は真理にたどり着くには短すぎるので、その思いを受け継いでくれる者の存在はそこにたどり着くための希望なんだなって。たとえそれで自分の導き出したものが間違いであると判明するとしても、「不正解は無意味を意味しない」というセリフもあり、それはカッコ良かった。実は、私の推している鬼がアレする作品もこの「継承」というのが大きなテーマの一つなんですね。あっちは「想い」を継承するというお話でしたが。『チ。』も真理探究への思いの継承と言えばそうなので、自分はそういうのに弱いんだなと思ったわけです。
つまり、メチャクチャ熱く何かに打ち込んでるヤツが、たとえ犠牲になって死のうがニヤリと笑って「あとはお前に託したぜ!」と退場し、託された方もうだうだしながらもある日吹っ切れて「よっしゃ、やるか!」みたいな王道少年漫画みたいなストーリーと言いますか。打ち込む対象が真理の追究みたいな壮大なものでなくても、共感できればそれでいい。多分、似たようなことを思う方は「プロジェクトX」とか、「プロフェッショナル」とか好んで見るタイプではないかと。ええ、私も好きです。
最後にビックリしたよね
『チ。』の作者さん、なんて読むのかわからなかったけど「ウオト」と読むのだそうです。読む前は中国の方なのかなと思ってたので、経歴を読んで日本人だと知りましたw。あと、27歳とのことでその若さでこの漫画が描けたのかと驚いたし、この方に付いてる編集さんが優秀な方らしく(東大卒らしい)やっぱ東大は頭イイんだなぁ~と二度驚いたよね。もっと精進して(謎の上から目線)もっと面白い漫画を読ませて欲しいです。期待しています!!
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