たった今、『昭和元禄落語心中』を読み終わりました。一言、ショック!! 読みながら「は?」「は?「は?」とバデーニさんみたいな声を出してしまいました(わからない方は「チ。」を読もう!)。最後まで気が付かなかった私って…?! 以下、ネタバレまったく考慮せずで感想です。
正直、嫌…
あの流れではどうしたって8代目八雲が信之助の父親なんだろうけど…個人的には嫌悪感に近いものがありました。めっちゃ面白かったのに、最後の最後でちょっと…。いや、これは私の中の倫理観がそれを良しとしなかっただけで、ストーリー的にはアリだと思います。むしろこの方が面白いとさえ思う。でも、八雲と言うキャラが好きだったのでそういうことする人であって欲しくなかったというのが大きいかな。なんせ、相手は30歳近く年下の言わば娘として育てた女の子だからね…。
やっぱり本筋はBLだった
最初から八雲は助六が好きなんだなと感じてましたが、みよ吉とか出てきたあたりで「勘違いかな」と思い直しました。ただ、やたらとそういう気配が薄い人というか、恋愛と言う面においてみよ吉への気持ちが上っ面というか情の深みを感じない人のようにも思っていました。人としての情はあるのにね。結局、最後まで読んでみて、八雲は助六を愛していて、みよ吉(を含め女性全般)を愛してはいなかったんだなと言うことがハッキリしました。八雲が同性愛者かどうかは分かりません(そこまで描かれていない、助六じゃなかったら愛していないと思うし)。ただ、男として助六を愛したのは間違いないと思います。
小夏のことは理解はできるけど好きじゃない
自分は最後までずっと親分が信之助の父親だと思っていました。もう少し詳細に言うと、そうだと言ってるからそうなんだと思っていました(単純)。それにしては親分との関係性が薄いし無理やりなところがあるなとは思っていたけど、そこは小夏はファザコンだからなぁということで自分自身を納得させていたんですね。加えて小夏の八雲に対する態度が酷いのも物語上しょうがないかなと思っていたけど(あまり気持ちのいいものではなかったけど)、態度とは裏腹に八雲を慕っているのも伝わっていました。ただ、それが恋愛的なそれとは思っていなかったので、本当にびっくりでした。でもまぁ、これは流れ的に理解できるからまぁ。でもさ~、最後に「信之助を八雲と助六のために生んだ」って言うのはきれいごと過ぎて私は好きじゃないな。八雲を愛したから生んだんでしょとしか(言えないだろうけど)。総じて、小夏は好きになれなかったですね…残念。
理解が難しいのは、八雲がそんな小夏を受け入れた理由ですね。八雲はきっと、小夏を女として愛してはいないと思う。ただ、愛している助六の娘であることは(そして因縁のあるみよ吉の娘でもある)八雲の心の何かを揺さぶるものがあったのだろうな。これは「八雲と助六のために信之助を生んだ」と言う言葉に集約されている気がしました。小夏が八雲に関係を迫った際に、そのようなことを言ったのではないかな。八雲にとって、もうこの世にいない、そして現実では絶対にありえなかった愛する男(の血を引いた存在)と自分が現実的に目合うことができること、その先で二人の血が交じり合うこと、はものすごく魅惑的だったのではないかと。それか、憎しみと愛情で混乱している小夏を「それも自分のせい」と思い可哀そうに思って抱いてやったのか。作者がぼかしてるから本当のところは分からないですけどね。
あと、ネットでいろいろ見て「助六とみよ吉に後ろめたい気持ちがあった」せいで二人の幻覚を見たのでは、と言うのは個人的にしっくりきました。一時の気の迷い(と言っていいと思う)で二人の娘と関係したことは八雲にとって後悔を伴う行為だったと思うので。
与太は全部を知ってると思う
多分ですけど。きっと、知ってて何も言わない人なんだろうなと思います。いい人だ~! 最後、与太郎がけっこう貫禄のある落語家姿になっていて嬉しかったです。懐の深い、いいキャラでした。小夏みたいな人にはこういうタイプがいいんだろうね。ただ、ちょっと影が薄いよね? やっぱり八雲が良すぎるからかなぁ。
結局、これも「継承」の話だった
落語文化の継承というテーマを背景に、いろいろあったせいで孤独を貫き「これで終わるならそういうものだったんでしょ」とする流れのままの厭世派八雲が与太の出現をきっかけに、自分でも気づかないうちに「愛するものを残し伝える」ようになっていく物語、って感じだったのかな? 八雲はそれを「未練」と言っていたけど。そういやあの世の手前(?)の世界にあった寄席でやった演目は「寿限無」だったし、それを聞かせたいのは信之助でしたね(八雲が父ちゃんしてた)。自分が愛したもの(落語と助六)を継いだ者…。
しかし、与太郎が高座で八雲師の幻影を見たように、人は老いると共に「未練」に自覚的になっていくものなんでしょうかね。でもその方が人間らしくていいと思うけどね。
というわけで、多分連載当時も物議をかもしたであろうラストでしたが、お話としてはとっても面白かったです。八雲師匠が本当に魅力的でした。次は何を読もうかな~♪
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